運動は妊活の味方になる
「治療中は安静にしたほうがいいのでは」と思う方もいらっしゃいますが、適度な運動は妊活にとってプラスに働くことが複数の研究で報告されています。血流の改善、ストレス軽減、体重管理、ホルモンバランスの安定など、全身の健康を通じて生殖機能をサポートします。
一方で、治療のステージによっては控えたほうがいい運動もあります。この記事では、やっていいこと・控えたいことを整理します。
おすすめの運動
ウォーキング
最も手軽で続けやすい運動です。1日30分程度のウォーキングは、血流改善とストレス軽減に効果的とされています。通院の帰り道に少し遠回りするだけでも十分です。
ヨガ・ストレッチ
身体の柔軟性を高め、リラックス効果が期待できます。妊活・不妊治療中の方向けのヨガクラスを開催しているスタジオもあります。腹部に過度な圧力をかけるポーズは避けましょう。
水泳・水中ウォーキング
関節への負担が少なく、全身運動ができます。ただし、移植後や採卵後は感染予防の観点から控えるよう指示される場合があります。
軽い筋力トレーニング
基礎代謝を上げ、インスリン感受性の改善に役立ちます。PCOSの方には特に推奨されることがあります。重い負荷は避け、自重トレーニング程度にとどめましょう。
治療ステージ別の注意点
タイミング法・人工授精の期間
通常の運動は基本的に問題ありません。排卵期〜高温期に激しい運動を控える必要性は、医学的には明確ではありませんが、心理的な安心のために軽めにする方もいます。
排卵誘発中(体外受精の準備期間)
排卵誘発剤で卵巣が腫大している場合は注意が必要です。
- 卵巣捻転のリスクがあるため、ジャンプや急な動きを伴う運動は控える
- ウォーキングや軽いストレッチは続けてOK
- 卵巣の大きさについて主治医に確認し、指示に従う
採卵後
採卵後は卵巣が腫れていることがあるため、数日間は安静寄りの生活が勧められます。OHSSのリスクがある場合は特に注意が必要です。
移植後〜判定日まで
移植後に絶対安静が必要というエビデンスはありません。日常生活は普通に過ごせますが、激しい運動は避けるのが一般的です。
- ウォーキング程度は問題ない
- 腹部に力が入るトレーニングは控える
- 「動かないほうが着床しやすい」という根拠はないので、適度に身体を動かすことはむしろ血流を促します
運動がメンタルに与える効果
不妊治療中のストレスや不安を軽減するうえで、運動は非常に有効な手段です。
- 有酸素運動はセロトニン(幸福感に関わる神経伝達物質)の分泌を促す
- 定期的な運動は不安やうつ症状を軽減するというメタ分析の結果がある
- パートナーと一緒にウォーキングすることで、治療以外のコミュニケーションの時間が生まれる
お子さんがいる方は、お子さんと公園で遊ぶ時間そのものが運動になります。「運動の時間を別に確保しなきゃ」と気負わなくても大丈夫です。
過度な運動は逆効果になることも
ハードなトレーニングや極端な食事制限を伴うダイエットは、排卵に悪影響を及ぼす可能性があります。
- 体脂肪率が極端に低い(BMI 18.5未満)と、月経不順や排卵障害のリスクが高まる
- マラソンのような長時間の高強度運動は、視床下部性の排卵障害との関連が指摘されている
- 「痩せれば妊娠しやすくなる」とは限らない。適正体重の維持が大切
パートナーの方へ
男性の運動も精液所見の改善に寄与する可能性があります。週に3回程度の中程度の有酸素運動(ジョギング、サイクリングなど)が推奨されます。ただし、長時間のサイクリングや、サウナ・長風呂などの陰嚢温度を上げる行為は精子に影響する可能性があるため、控えめにしましょう。
この記事のポイント
- 適度な運動は妊活の味方。ウォーキング、ヨガ、軽い筋トレがおすすめ
- 排卵誘発中と採卵後は激しい運動を控える
- 移植後に絶対安静は不要。日常生活は普通に過ごしてOK
- 運動はメンタルヘルスにもプラスの効果がある
心身のケアについてはセルフケアの記事もご参照ください。
出典
- ACOG(米国産婦人科学会)「Physical Activity and Exercise During Pregnancy and the Postpartum Period」
- 日本生殖医学会「生殖医療の必修知識」
