胚のグレードって何だろう?──知ることで、少し気持ちが軽くなるかもしれません

体外受精や顕微授精を進めていくなかで、「胚のグレード」という言葉を目にする機会があるかもしれません。診察室で初めて聞いたとき、「よくわからないけれど、数字が気になる」「グレードが低いと言われて不安になった」──そんな気持ちを抱えている方も多いのではないでしょうか。

グレードは、培養士が胚の見た目(形態)を評価したものです。妊娠の可能性を予測するひとつの目安ではありますが、グレードだけで結果が決まるわけではありません。まずはその仕組みを一緒に見ていきましょう。知ることで、次の診察がほんの少し楽になるかもしれません。

そもそも「胚のグレード」とは

受精卵は培養液のなかで細胞分裂を繰り返し、やがて子宮に戻せる状態まで育ちます。この過程で、培養士が顕微鏡を使って胚の形態──細胞の数や大きさの均一さ、フラグメント(細胞の断片)の量などを観察し、ランク付けしたものがグレードです。

ポイントは、グレードは「見た目の評価」であるということ。胚の染色体が正常かどうか、着床する力がどのくらいあるかを直接測定しているわけではありません。あくまで「形態的に良好な胚は、統計的に妊娠率が高い傾向がある」という経験則に基づいた指標です。

評価の方法は、胚の発育段階によって異なります。大きく分けると「初期胚(分割期胚)」「胚盤胞」の2つの段階で、それぞれ別の分類法が使われています。

初期胚のグレード──Veeck分類(G1〜G5)

採卵から2〜3日目の胚を「初期胚」または「分割期胚」と呼びます。この段階の評価に広く用いられているのがVeeck(ヴィーク)分類です。グレード1がもっとも形態が良好で、グレード5に向かうにつれて形態上の課題が増えていきます。

各グレードの特徴

  • グレード1(G1):細胞の大きさが均一で、フラグメントがほとんどない状態。もっとも形態が良好とされます。
  • グレード2(G2):細胞の大きさが均一で、わずかにフラグメントがある状態。G1とほぼ同等に良好とみなされることが多いです。
  • グレード3(G3):細胞の大きさが不均一ですが、フラグメントは少ない状態。移植の対象になることも十分あります。
  • グレード4(G4):細胞の大きさが均一または不均一で、フラグメントがやや多い状態。
  • グレード5(G5):フラグメントが非常に多く、細胞がほとんど確認できない状態。

「G3と言われたけれど大丈夫かな」と心配される方もいらっしゃいますが、G3の胚で妊娠・出産に至るケースは珍しくありません。グレードはあくまで形態上の分類であり、一つひとつの胚が持つ可能性を否定するものではないということを覚えておいてください。

胚盤胞のグレード──Gardner分類

採卵から5〜6日目まで培養を続けると、胚は「胚盤胞」と呼ばれる段階に達します。胚盤胞の評価にはGardner(ガードナー)分類が広く使われており、3つの要素を組み合わせて表記されます。

①発育段階(数字:1〜6)

  • 1:初期胚盤胞(胞胚腔が胚の半分未満)
  • 2:胚盤胞(胞胚腔が胚の半分以上)
  • 3:完全胚盤胞(胞胚腔が胚全体に広がっている)
  • 4:拡張胚盤胞(胞胚腔がさらに広がり、透明帯が薄くなっている)
  • 5:孵化中胚盤胞(透明帯の一部が破れ、胚が出始めている)
  • 6:孵化後胚盤胞(透明帯から完全に脱出した状態)

②内細胞塊(ICM)の評価(アルファベット1文字目)

  • A:細胞数が多く、しっかりまとまっている
  • B:細胞数がやや少ない、またはまとまりがゆるい
  • C:細胞数が少ない

③栄養外胚葉(TE)の評価(アルファベット2文字目)

  • A:細胞数が多く、均一な層を形成している
  • B:細胞数がやや少ない、または不均一
  • C:細胞数が少ない

たとえば「4AA」は、「拡張胚盤胞で、内細胞塊・栄養外胚葉ともに良好」という意味です。「3BB」であれば「完全胚盤胞で、両方の評価がやや控えめ」ということになります。

初期胚のVeeck分類(G1〜G5)と胚盤胞のGardner分類(数字+アルファベット2文字)の評価基準をまとめた図解

グレードと妊娠率の関係

一般的に、形態が良好な胚ほど妊娠率が高い傾向があるとされています。たとえば胚盤胞の場合、AAやABの胚はBBやBCの胚と比べて統計的に着床率が高いというデータが複数の研究で報告されています。

ただし、ここで大切なのは「統計」と「個人の結果」は別のものだということです。統計はあくまで大勢の平均値であり、目の前の一つの胚がどうなるかを100%予測することはできません。

実際に、グレードが最高評価の胚を移植しても着床しないことはありますし、逆にグレードが控えめな胚から元気な赤ちゃんが生まれることもあります。グレードは確率を示す目安であって、運命を決める数字ではありません。

グレードが低めでも妊娠に至るケース

「グレードがあまり良くなかったんです」──そう打ち明けてくださる方の声には、不安や落胆がにじんでいることがあります。その気持ちはとても自然なものです。

そのうえでお伝えしたいのは、グレードが控えめでも妊娠・出産に至る方は確かにいらっしゃるということです。その理由として、以下のようなことが挙げられます。

  • 形態だけでは測れない力がある:胚の染色体の状態や、子宮内膜との相性など、見た目の評価では捉えきれない要素が妊娠には関わっています。
  • 培養環境と体内環境は異なる:培養器の中での見え方と、子宮の中での発育力は必ずしも一致しません。体内に戻ってから力を発揮する胚もあります。
  • フラグメントは吸収されることがある:初期胚で見られるフラグメントは、発育の過程で胚自身に再吸収されることがあります。

もちろん、グレードが高いほうが統計的には有利です。けれど、グレードが低いからといって可能性がゼロになるわけではありません。あなたの胚には、数字だけでは語れない可能性がある──そのことを忘れないでいてほしいと思います。

医師に相談するときのポイント

グレードについて説明を受けたとき、その場では緊張して質問できなかった、という経験をお持ちの方もいるかもしれません。次の診察では、以下のような点を確認してみると、治療への理解が深まります。

  • 「この胚のグレードは、先生のご経験ではどのくらいの見込みですか?」:施設ごとに培養技術やデータの蓄積が異なるため、通っているクリニックの実績を聞くのがもっとも参考になります。
  • 「移植する胚の選び方を教えてください」:複数の胚がある場合、どの順番で移植するか、凍結するかの方針を確認しておくと安心です。
  • 「グレード以外に着目しているポイントはありますか?」:タイムラプス培養やPGT-A(着床前遺伝学的検査)など、形態評価以外のアプローチについても相談できます。
  • 「今の治療方針で、私たちにできることはありますか?」:生活習慣の見直しやサプリメントなど、ご自身で取り組めることを聞いておくのもひとつの方法です。

質問をメモに書いて持っていくのもおすすめです。限られた診察時間を有効に使うことができます。

まとめ

胚のグレードは、培養士が形態を観察して評価した指標です。初期胚にはVeeck分類(G1〜G5)、胚盤胞にはGardner分類(数字+アルファベット2文字)が広く用いられています。

グレードが高いほど妊娠率が高い傾向はありますが、それは統計上の話です。グレードは可能性を測るひとつの物差しであって、あなたの胚の未来を決定するものではありません。

数字を見て不安になったら、まずは担当の医師や培養士に率直に気持ちを伝えてみてください。あなたの状況に合った説明をしてもらえるはずです。一人で抱え込まず、専門家の力を借りながら、ご自身のペースで進んでいってください。