両立に悩んでいるのは、あなただけではありません

不妊治療と仕事の両立は、多くの方が直面する課題です。厚生労働省の調査(2023年)によると、不妊治療経験者の約35%が「仕事との両立が困難だった」と回答しています。通院の頻度、急な予定変更、体調の波。治療のスケジュールは自分でコントロールしにくい部分が多いため、難しさを感じるのは自然なことです。

この記事では、治療と仕事を両立するための具体的な方法と、使える制度について整理しました。

治療スケジュールと仕事の調整

不妊治療では、月経周期に合わせた通院が必要になります。タイミング法でも月に2〜3回、体外受精になると採卵前の連日通院が発生することもあります。

通院日が事前に確定しにくいのが、両立を難しくしている大きな要因です。以下の工夫で、調整しやすくなる場合があります。

  • 朝一番の予約を取る — 午前中に通院を済ませ、午後から出社する。早朝枠があるクリニックも増えている
  • フレックスタイム制度を活用する — 出社時間を柔軟にできる場合は、通院日の調整がしやすくなる
  • 半休を分割して使う — 時間単位の有給取得が可能な職場であれば、通院に必要な2〜3時間だけ休みを取る

治療のステージによって通院頻度は変わります。主治医に「今後のスケジュール感」を聞いておくと、仕事側の調整がしやすくなります。

使える制度を知っておく

不妊治療と仕事の両立を支援する制度は、近年整備が進んでいます。

不妊治療連携カード(厚生労働省)

主治医に治療スケジュールや配慮事項を記入してもらい、職場に提出できるカードです。厚生労働省のWebサイトからダウンロードできます。直接上司に症状を説明しにくい場合に、医師の言葉を借りられるのがメリットです。

企業独自の不妊治療休暇制度

大手企業を中心に、不妊治療のための特別休暇や時差出勤制度を設ける企業が増えています。就業規則や人事部に確認してみてください。制度がなくても、個別に相談すれば柔軟に対応してもらえるケースもあります。

傷病手当金(健康保険)

採卵後の体調不良などで連続して休む場合、医師の診断書があれば傷病手当金の対象になる可能性があります。詳細は加入している健康保険組合に確認してください。

fertility-work-balance 図解

職場への伝え方

治療のことを職場に伝えるかどうかは、完全に個人の判断です。伝える義務はありません。ただ、通院頻度が高くなってきたとき、「体調不良」だけでは説明しきれなくなる場面が出てくることがあります。

伝える場合は、以下のポイントを意識すると伝わりやすくなります。

  • 伝える相手を選ぶ — 直属の上司だけ、人事担当者だけなど、必要最小限の範囲で
  • 業務への影響と対策をセットで伝える — 「月に○回程度の通院が必要になるが、前日までに業務の引き継ぎをする」など
  • 詳しい治療内容まで話す必要はない — 「通院が必要な治療を受けている」で十分

不妊治療連携カードを活用すれば、口頭で説明する負担を減らせます。

在宅勤務・転職という選択肢

リモートワークが可能な職場であれば、通院日を在宅勤務にすることで、移動時間を大幅に減らせます。通院後に自宅で仕事を再開できるのは、体力面でも助かる点です。

もし現在の職場で両立がどうしても難しい場合、治療と両立しやすい働き方への転職を検討する方もいます。フレックスタイムやリモートワークが標準の企業、時短勤務が選べる企業など、選択肢は広がっています。

治療のために仕事を辞める決断をする方もいますが、経済面・キャリア面の両方に影響があるため、パートナーと十分に話し合ったうえで判断することをおすすめします。

がんばりすぎない仕組みをつくる

両立の本質は、「完璧にこなす」ことではなく、「続けられる仕組みをつくる」ことです。仕事のパフォーマンスが一時的に下がっても、それは治療と並行しているからであって、あなたの能力が落ちたわけではありません。

使える制度は遠慮なく使い、頼れる人には頼る。治療も仕事も、長期戦だからこそ、自分を追い込みすぎない工夫が大切です。