男性の妊孕力とホルモンの関係

精子の産生は、脳(視床下部・下垂体)から分泌されるホルモンと精巣で作られるテストステロンの連携によってコントロールされています。ホルモンバランスの乱れは、精子の数や質に影響を与える可能性があります。

ホルモン検査は血液検査で行われ、採血だけで済みます。結果は精液検査と合わせて総合的に判断されます。

主要なホルモンと役割

FSH(卵胞刺激ホルモン)

下垂体から分泌され、精巣内のセルトリ細胞を刺激して精子の産生を促します。

  • 基準値:1.5〜12.4 mIU/mL(施設により若干異なる)
  • 高値の場合:精巣の精子産生能力が低下している可能性。非閉塞性無精子症や重度の精子形成障害で見られる
  • 低値の場合:下垂体の機能低下(低ゴナドトロピン性性腺機能低下症)。ホルモン補充で改善の可能性がある

LH(黄体形成ホルモン)

下垂体から分泌され、精巣内のライディッヒ細胞を刺激してテストステロンの産生を促します。

  • 基準値:0.8〜5.7 mIU/mL
  • FSHと合わせて評価:LHとFSHがともに低い場合、下垂体の問題が疑われる

テストステロン(男性ホルモン)

精巣から分泌される主要な男性ホルモン。精子の産生、性欲、勃起機能に関わります。

  • 基準値:総テストステロン 2.5〜10.0 ng/mL(遊離テストステロンも測定されることがある)
  • 低値の場合:精子産生の低下、性欲減退、勃起障害が起こりうる
  • 注意:テストステロン値は朝が最も高く、午後に低下する。検査は午前中に行うのが望ましい

プロラクチン

通常は女性の乳汁分泌に関わるホルモンですが、男性でも高値になると性機能や精子産生に影響します。

  • 高プロラクチン血症の原因:薬剤性(一部の抗うつ薬、胃薬等)、下垂体腫瘍(プロラクチノーマ)
  • 原因を特定して治療することで、改善が期待できる

ホルモン検査の結果パターンと意味

FSH高値 + テストステロン低〜正常

精巣の精子産生能力が低下しているパターンです。非閉塞性無精子症や重度の乏精子症で見られます。FSHが高いのは、精巣が十分に機能していないことを脳がフィードバックとして感知し、「もっと精子を作れ」と刺激を増やしている状態です。ただし、FSH高値だからといって治療の道がないわけではありません。micro-TESEなどの外科的精子回収で精子が見つかるケースもあり、専門医と相談しながら次のステップを検討できます。

FSH低値 + LH低値 + テストステロン低値

低ゴナドトロピン性性腺機能低下症のパターン。脳からの指令が不足しているため、精巣が十分に働けない状態です。ホルモン補充療法(hCG / FSH製剤の注射)で精子産生が改善することがあり、治療効果が期待しやすいタイプです。

FSH正常 + テストステロン正常

ホルモン的には問題がないパターン。閉塞性無精子症(精子は作られているが通り道が詰まっている)や、軽度の精子形成障害が考えられます。

テストステロン補充療法の落とし穴

妊活中の男性は、テストステロン補充療法(TRT)を受けてはいけません。

テストステロンを外部から投与すると、脳は「テストステロンは十分にある」と判断してFSHとLHの分泌を抑制します。その結果、精巣での精子産生が止まってしまいます。

  • 男性型脱毛症(AGA)の治療でテストステロン系の薬を使っている場合は要注意
  • 筋トレ目的でテストステロンを使用している場合も同様
  • 中止すれば回復することが多いが、長期使用の場合は回復に時間がかかる

妊活中にテストステロンが低い場合は、TRTではなく、hCGやクロミフェンといった精巣自体のテストステロン産生を促す薬が選択されます。

パートナーの方へ

ホルモン検査は「異常があるかどうか」を調べるだけでなく、治療の方針を決める重要な材料です。結果の見方が分からない場合は、一緒に医師の説明を聞くと、二人で次のステップを判断しやすくなります。

テストステロン低値は、精子への影響だけでなく、気分の落ち込みや疲労感にも関わります。パートナーの体調変化に気づいたら、声をかけてみてください。

二人目の妊活を考えている方へ

一人目の時に問題がなかったホルモン値も、加齢やストレスによって変化することがあります。「前は大丈夫だったのに」と戸惑う方もいらっしゃいますが、それは珍しいことではありません。二人目の妊活を始める際にも、改めてホルモン検査を受けると現在の状態を把握できます。

この記事のポイント

  • FSH、LH、テストステロンが精子産生の三本柱
  • FSH高値は精巣機能の低下、低値は脳からの指令不足を示唆
  • 妊活中のテストステロン補充療法は精子産生を止めるためNG
  • ホルモン異常のタイプによっては、薬物療法で改善が期待できる

精液検査については精液検査の記事を、男性不妊の全体像は男性不妊の記事をご参照ください。

出典

  • 日本泌尿器科学会「男性不妊症診療ガイドライン」
  • 日本内分泌学会「内分泌疾患の手引き」