精索静脈瘤とは

精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)は、精巣の上にある静脈(蔓状静脈叢)が拡張した状態です。男性不妊の原因として最も多く、不妊男性の約30〜40%に見られるとされています。

左側に多く(約80〜90%)、無症状の場合もありますが、精巣の温度上昇や血流の滞りにより精子の質に影響を与える可能性があります。

症状

  • 陰嚢の鈍痛や違和感(立位で悪化、横になると軽減することが多い)
  • 陰嚢の左右差(左側が下がって見える場合がある)
  • 無症状の場合も多く、精液検査の結果がきっかけで発見されることがある

診断

  • 触診:立った状態で腹圧をかけ(息んで)、拡張した静脈を触知する
  • 超音波検査(エコー):静脈の拡張度合いを客観的に評価。痛みのない検査

グレードは通常3段階で分類されます:

  • Grade I:腹圧をかけた時のみ触知
  • Grade II:立位で触知できる
  • Grade III:目視でも分かる拡張

治療:手術の種類

精索静脈瘤の治療は外科的手術が基本です。主な術式は以下の通りです。

顕微鏡下精索静脈瘤低位結紮術

現在、最も推奨される術式です。手術用顕微鏡を使って、動脈やリンパ管を温存しながら静脈のみを結紮(しばる)します。

  • 再発率が低い(1〜2%程度)
  • 合併症(陰嚢水腫など)のリスクが低い
  • 日帰り〜1泊入院が一般的
  • 局所麻酔または全身麻酔

腹腔鏡下手術

お腹に小さな穴を開けて、内視鏡で静脈を結紮する方法。両側性の場合に選択されることがあります。

経皮的塞栓術

カテーテルを使って、静脈を内側から塞ぐ方法。手術に抵抗がある場合の選択肢ですが、実施施設は限られます。

手術の効果

手術により精液所見(精子濃度・運動率)が改善する方は約60〜80%とされています。ただし、改善には3〜6か月程度かかります(精子の形成には約74日間かかるため)。

  • 自然妊娠率の向上:手術後の自然妊娠率は約30〜50%と報告されている
  • 体外受精・顕微授精の成績向上にもつながる可能性がある

一方で、手術をしても精液所見が改善しない方もいます。その場合も、体外受精・顕微授精と組み合わせることで妊娠を目指せます。どの道を選ぶか、主治医と一緒に整理していきましょう。

手術を受けるかどうかの判断

以下の条件が揃っている場合に手術が推奨されることが多いです。

  • 触知可能な精索静脈瘤がある
  • 精液所見に異常がある
  • カップルに不妊期間がある
  • 女性側に不妊の重大な原因がない(ある場合は女性側の治療を優先する場合も)

費用の目安

  • 顕微鏡下手術:15万〜30万円程度(自費の場合)
  • 保険適用になる場合もある(施設・術式による)
  • 高額療養費制度の対象になることがある

パートナーの方へ

精索静脈瘤の手術は「男性側でできる数少ない積極的治療」のひとつです。手術を提案する際は、医師からの説明を一緒に聞く場を設けると、二人で納得して判断しやすくなります。

  • 手術後の回復期間(1〜2週間は重い物を持てない等)のサポートを伝えておく
  • 効果が出るまで3〜6か月かかることを共有し、焦らず待てる環境を作る

この記事のポイント

  • 精索静脈瘤は男性不妊の原因として最も多い
  • 顕微鏡下手術が推奨され、約60〜80%で精液所見が改善
  • 効果が出るまで3〜6か月。精子の形成サイクルを待つ必要がある
  • 手術のメリット・リスクを主治医と相談して判断

男性不妊の全体像については男性不妊の基礎知識を、精液検査については精液検査の記事もご参照ください。

出典

  • 日本泌尿器科学会「男性不妊症診療ガイドライン」
  • European Association of Urology (EAU) Guidelines on Male Infertility