ステップアップ治療とは

不妊治療は一般的に、負担の少ない治療から始めて、妊娠に至らない場合に段階的に高度な治療へ進む「ステップアップ」方式で行われます。

ただし、検査結果や年齢によっては最初から高度な治療を選択する場合もあります。ここでは、各治療段階の概要と、ステップアップの判断基準について解説します。

ステップ1:タイミング法

超音波検査や血液検査で排卵日を正確に予測し、最適な時期に性交渉を持つ方法です。不妊治療の最初のステップとして広く行われています。

タイミング法の概要

  • 1周期あたりの妊娠率:約5〜8%(年齢により異なる)
  • 通院回数:1周期あたり2〜3回程度
  • 費用:保険適用で1周期あたり数千円程度
  • 試行期間の目安:3〜6周期

パートナーも排卵日の把握に参加し、二人のスケジュールを調整します。

排卵障害がある場合は、クロミフェン(クロミッド)などの排卵誘発剤を併用することもあります。

詳しくはタイミング法の解説ページをご覧ください。

ステップ2:人工授精(IUI)

精液を洗浄・濃縮処理した後、カテーテルで子宮内に直接注入する方法です。精子が卵管に到達する確率を高めることが目的です。

人工授精の概要

  • 1周期あたりの妊娠率:約5〜10%
  • 通院回数:1周期あたり3〜4回程度
  • 費用:保険適用で1回あたり約5,000〜6,000円
  • 試行期間の目安:4〜6周期

当日は精液の提供が必要です。

人工授精は処置自体の痛みが少なく、身体的負担は比較的軽いとされています。ただし、卵管が閉塞している場合や重度の男性不妊の場合は効果が期待しにくいため、別の治療法が検討されます。

詳しくは人工授精の解説ページをご覧ください。

ステップ3:体外受精(IVF)・顕微授精(ICSI)

卵巣から卵子を採取し、体外で精子と受精させた後、胚(受精卵)を子宮に戻す方法です。顕微授精は、精子を直接卵子に注入する方法で、重度の男性不妊にも対応できます。

体外受精の概要

  • 1周期あたりの妊娠率:年齢により大きく異なります(詳細はART登録施設の記事をご参照ください)
  • 通院回数:1周期あたり5〜10回程度
  • 費用:保険適用で1周期あたり約15〜20万円(自己負担3割の場合)
  • 所要期間:1周期あたり約1〜2か月

採卵日にパートナーの精液提供が必要です。スケジュールを事前に共有しておきましょう。

体外受精は身体的・精神的・経済的な負担が大きい一方、妊娠率は他の治療法と比較して高く、高度な治療法として位置づけられています。

詳しくは体外受精の解説ページをご覧ください。

ステップアップの判断基準

次のステップに進むかどうかの判断は、主に以下の要素を考慮して医師と相談のうえ決定されます。

  • 現在の治療を一定回数試みても妊娠に至らない場合
  • 女性の年齢(年齢や検査結果に応じて、治療の進め方が異なる場合がある)
  • 不妊原因の種類と程度
  • AMH値(卵巣予備能)の低下
  • 患者夫婦の希望と経済的な状況

年齢や検査結果に基づいて、最も適した治療から始めるケースもあります。明確な原因がある場合(両側卵管閉塞、重度の男性不妊など)は、最初から体外受精を選択することもあります。これは「ステップアップ」に対して「最適治療選択」と呼ばれることもあります。

治療期間のイメージ

一般的なステップアップの場合、以下のようなスケジュールが目安です。

  • タイミング法:3〜6か月
  • 人工授精:4〜6か月
  • 体外受精:1周期1〜2か月(複数回行う場合もある)

トータルで1〜2年程度の治療期間を見込んでおくと、心の準備がしやすくなります。ただし治療経過には個人差が大きく、これより短い場合も長くなる場合もあります。