凍結融解胚移植とは
凍結融解胚移植(FET: Frozen Embryo Transfer)は、体外受精や顕微授精で得られた胚(受精卵)を一度凍結保存し、別の周期に融解して子宮に戻す方法です。
近年の不妊治療では、採卵周期にそのまま移植する「新鮮胚移植」よりも、凍結融解胚移植のほうが主流になっています。子宮内膜の状態を整えてから移植できるため、着床率が高くなる傾向があるためです。
新鮮胚移植との違い
- 新鮮胚移植:採卵した周期にそのまま移植。排卵誘発の影響でホルモン環境が自然な状態とは異なる場合がある
- 凍結融解胚移植:採卵とは別の周期に移植。子宮内膜の準備を最適な状態で行える。OHSS(卵巣過剰刺激症候群)のリスクも軽減できる
JSOGのARTデータブックでも、凍結融解胚移植のほうが妊娠率・生産率ともに高い傾向が報告されています。
治療の流れ
ホルモン補充周期の場合
ホルモン剤を使って子宮内膜を整える方法です。排卵に左右されず、スケジュールが立てやすいのが特徴です。
- 月経開始後:エストロゲン製剤(貼り薬、飲み薬、膣錠など)で内膜を厚くする
- 内膜チェック:超音波検査で内膜の厚さを確認(8mm以上が目安)
- プロゲステロン開始:移植の4〜5日前からプロゲステロン(黄体ホルモン)を開始
- 移植日:融解した胚を子宮内に移植(処置は5〜10分程度)
- 判定日:移植後約10〜14日後に妊娠判定
自然周期の場合
自力で排卵する方に適した方法です。
- 自然な排卵を超音波とホルモン検査で確認し、排卵後のタイミングで移植
- ホルモン剤の使用が少ないため、薬の副作用が気になる方にはメリットがある
- 一方、排卵のタイミングに左右されるため、スケジュールの予測が難しい場合がある
成功率の目安
凍結融解胚移植の妊娠率は、胚の質や子宮内膜の状態によって個々に異なります。以下はあくまで全国平均の参考値であり、ご自身の見通しは主治医と確認してください。
- 35歳未満:45〜55%程度
- 35〜39歳:35〜45%程度
- 40歳以上:20〜30%程度(個人差が大きい)
(出典:JSOG ARTデータブック)
数字はあくまで統計上の平均です。胚の質や子宮内膜の状態によって、個々の確率は変わってきます。主治医と一緒に、ご自身の状況に合わせた見通しを確認してください。
費用の目安
凍結融解胚移植は保険適用です。
- 移植の技術料(3割負担):3万〜5万円程度
- 胚の融解費用:1万〜3万円程度
- ホルモン補充の薬剤費:数千円〜1万円程度
- 凍結保存の継続費用(年間):3万〜6万円程度(自費の場合も。施設により異なる)
1周期あたりの自己負担は、おおよそ5万〜10万円程度が目安です。高額療養費制度の対象になります。
移植後の過ごし方
移植後の過ごし方について、不安に感じる方が多い部分です。
- 安静にしすぎなくて大丈夫:移植後に絶対安静が必要というエビデンスはありません。日常生活は普通に過ごせます
- 激しい運動は避ける:判定日までは激しい運動や長時間の入浴は控えるよう指示されることが一般的です
- 薬の服用を忘れずに:ホルモン補充周期の場合、プロゲステロンの服用・使用を忘れないことが大切です
- 気持ちの整え方:判定日までの2週間は、結果が気になって落ち着かない方が多いです。「今できることはすべてやった」と自分に言い聞かせることが、心の支えになります
パートナーの方へ:移植後の2週間は、結果が分かるまでの不安な期間です。「大丈夫だよ」と言うよりも、一緒に好きなことをして過ごす時間を作ったり、日常の家事を多めに引き受けたりすることが、具体的なサポートになります。
胚の凍結保存について
体外受精で複数の胚が得られた場合、余剰胚を凍結保存できます。
- 凍結技術(ガラス化法)の進歩により、融解後の胚の生存率は95%以上と高い水準にあります
- 凍結保存した胚は数年間保存可能(保存期間はクリニックの方針による)
- 二人目の妊娠を考える際に、改めて採卵をせずに移植できるメリットがあります
この記事のポイント
- 凍結融解胚移植は現在の主流。子宮内膜を最適な状態で移植できる
- 妊娠率は新鮮胚移植より高い傾向がある
- 保険適用で受けられる
- 移植後は日常生活を普通に過ごしてOK
体外受精全体の流れについては体外受精の費用とスケジュールを、保険適用の詳細は保険適用まとめをご参照ください。
出典
- 日本産科婦人科学会 ARTデータブック
- 日本生殖医学会「生殖医療の必修知識」
