アシステッドハッチング(AHA)とは?

アシステッドハッチングとは、胚(受精卵)を覆っている「透明帯」という殻に人工的に切れ目や薄い部分をつくり、胚が殻から出やすくする技術です。英語では「Assisted Hatching」と表記され、AHAまたはAHと略されます。

自然妊娠でも体外受精でも、胚が子宮内膜に着床するためには、まず透明帯を破って外に出る(ハッチング)必要があります。何らかの理由でこのハッチングがうまくいかないと、着床の妨げになる可能性があります。アシステッドハッチングは、この過程を補助する処置です。

なぜアシステッドハッチングが必要になるのか

透明帯は、受精卵を保護する大切な役割を果たしています。しかし、以下のような場合には透明帯が通常より硬くなったり厚くなったりして、胚が自力で脱出しにくくなることがあります。

  • 年齢の影響:年齢が上がると透明帯が硬化しやすくなる傾向があります
  • 凍結・融解の影響:胚の凍結保存と融解の過程で透明帯が変性し、硬くなることがあります
  • 透明帯が厚い胚:もともと透明帯が厚い胚は、ハッチングに時間がかかる場合があります
  • 体外培養の影響:体内と異なる培養環境が透明帯の性質に影響する可能性も指摘されています

アシステッドハッチングの方法

現在、主に以下の方法が用いられています。

レーザー法

もっとも広く使われている方法です。専用のレーザーを照射して透明帯の一部を薄くしたり、穴を開けたりします。精度が高く、胚への影響を最小限に抑えられるとされています。

酸性タイロード液法

酸性の溶液を透明帯に接触させて溶かす方法です。以前から用いられてきた手法ですが、操作にやや熟練を要するため、現在はレーザー法に置き換わりつつあります。

機械的方法

マイクロニードル(極細の針)で透明帯に切れ込みを入れる方法です。

アシステッドハッチングの仕組み。透明帯にレーザーで切れ目を入れ、胚のハッチングを補助する様子
glossary-assisted-hatching 図解

アシステッドハッチングが適応となるケース

すべての胚移植でアシステッドハッチングが行われるわけではありません。一般的に以下のようなケースで検討されます。

  • 反復着床不全:良好な胚を複数回移植しても着床しない場合
  • 38歳以上の方:年齢に伴う透明帯硬化のリスクがある場合
  • 凍結融解胚移植:凍結・融解による透明帯の変性が考えられる場合
  • 透明帯が厚い胚:培養中の観察で透明帯の厚さが目立つ場合
  • 初期胚移植:胚盤胞ではなくDay 2〜3の初期胚を移植する場合に行われることがあります

効果についてのエビデンス

アシステッドハッチングの効果については、さまざまな研究が行われてきました。すべての患者さんに一律に効果があるとまでは言い切れないものの、反復着床不全の方や凍結胚移植において着床率の改善が報告されている研究もあります。

日本産科婦人科学会のガイドラインでも、適応を見極めたうえでの実施が推奨されています。クリニックによって方針は異なりますが、「やったほうがいいか」を相談してみる価値はあります。

なお、アシステッドハッチングは保険適用の体外受精に併用できる先進医療として認められているケースもあり、費用はクリニックにより異なりますが、おおむね1〜3万円程度です。

まとめ

アシステッドハッチングは、透明帯が原因で着床が妨げられている可能性がある場合に検討される技術です。すべての方に必要なものではありませんが、反復着床不全や凍結胚移植のケースでは選択肢の一つになります。「自分に必要かどうか」は胚の状態や治療経過によって異なりますので、気になる場合は主治医や培養士に相談してみてください。