子宮内膜の厚さと着床の関係
子宮内膜は、子宮の内側を覆う粘膜組織で、受精卵が着床する「ベッド」のような役割を果たしています。不妊治療では、胚移植の前に超音波検査で子宮内膜の厚さを測定し、着床に適した状態かどうかを確認します。
内膜の厚さは月経周期に合わせて変化します。月経直後は薄く、排卵日に向かってエストロゲンの作用で厚くなっていきます。胚移植のタイミングでは、十分な厚さがあることが着床の条件の一つと考えられています。
理想の厚さはどのくらい?
一般的に、胚移植時の子宮内膜の厚さは8mm以上が一つの目安とされています。多くの研究で、8mm以上の内膜厚がある場合に妊娠率が高い傾向が報告されています。
- 8mm以上:十分な厚さとされ、多くのクリニックで移植の基準とされています
- 7mm前後:やや薄いものの、移植を行うクリニックもあります。胚の質や他の条件と総合的に判断されます
- 7mm未満:着床率が下がる傾向があるとされ、移植を延期して内膜を整える周期に切り替えることがあります
ただし、厚さの数値はあくまで目安です。8mmに届かなくても妊娠・出産に至るケースはありますし、逆に十分な厚さがあっても着床しないこともあります。

子宮内膜が薄くなる原因
内膜が十分に厚くならない原因はさまざまです。
ホルモンの問題
エストロゲンの分泌が不足していると、内膜が十分に増殖しません。ホルモン補充周期で移植を行う場合は、エストロゲン製剤の量や投与方法を見直すことがあります。
子宮内の血流不足
子宮への血流が不十分だと、内膜に栄養が届きにくくなり、厚さが増しにくくなります。冷えやストレス、運動不足が血流に影響する場合もあります。
過去の手術や処置の影響
子宮内膜掻爬術(そうはじゅつ)や流産手術を繰り返した場合、内膜の基底層が傷つき、再生しにくくなることがあります。これを「アッシャーマン症候群」と呼ぶ場合もあります。
排卵誘発剤の影響
クロミフェン(クロミッド)などの排卵誘発剤は、その作用メカニズムから内膜を薄くする副作用があることが知られています。

子宮内膜を厚くするための対策
内膜が薄いと指摘された場合、以下のような方法が検討されます。
- エストロゲン製剤の調整:貼り薬・飲み薬・膣錠など、投与経路や量を変えることで効果が変わることがあります
- ビタミンE(トコフェロール)の内服:血流改善作用があり、内膜の厚さ改善に効果が報告されています。比較的取り入れやすい方法の一つです
- L-アルギニン:血管拡張作用のあるアミノ酸で、子宮への血流を改善する可能性があります
- バイアスピリン(低用量アスピリン):血流改善を目的として処方されることがあります
- 適度な運動・温活:ウォーキングやストレッチなど、下半身の血流を促す運動が勧められることがあります
- PRP療法(多血小板血漿療法):自分の血液から抽出した成長因子を子宮内に注入する方法で、一部のクリニックで実施されています
厚さだけがすべてではない
子宮内膜の「厚さ」は大切な指標ですが、それだけで着床の成否が決まるわけではありません。
内膜の質(パターン)
超音波検査では、内膜の厚さだけでなく「パターン」も評価されます。木の葉のような三層構造(トリラミナーパターン)が見られると、着床に適した状態とされています。
着床の窓(インプランテーションウィンドウ)
子宮内膜が胚を受け入れられる時間帯は限られており、この「着床の窓」のタイミングが合っているかどうかも重要です。ERA検査(子宮内膜受容能検査)で個人のタイミングを調べることもできます。
子宮内の環境
子宮内フローラ(細菌叢)のバランスや、慢性子宮内膜炎の有無なども着床に影響を与える要因として注目されています。
まとめ
子宮内膜の厚さは、着床環境を評価する大切な指標の一つです。8mm以上が目安とされていますが、厚さだけで結果が決まるわけではありません。薄いと言われた場合でも、ホルモン調整や血流改善などさまざまなアプローチがあります。内膜の状態について気になることがあれば、主治医に相談しながら、自分に合った対策を探していきましょう。
