EMMA・ALICE検査とは

EMMA検査とALICE検査は、子宮内の細菌環境(子宮内フローラ)を調べるための検査です。どちらもスペインの研究機関Igenomix社が開発し、子宮内膜の組織を少量採取して、次世代シーケンサー(NGS)で細菌のDNAを解析します。

  • EMMA(Endometrial Microbiome Metagenomic Analysis):子宮内フローラ全体のバランスを調べる
  • ALICE(Analysis of Infectious Chronic Endometritis):慢性子宮内膜炎の原因菌を特定する

着床不全や反復流産の原因を探る検査として、近年注目が高まっています。「移植を繰り返しても着床しない」「流産を繰り返してしまう」という方にとって、原因を特定し、次の手立てを考えるための検査です。

子宮内フローラとは

「フローラ」とは、ある環境に棲む微生物の集まりのことです。腸内フローラはよく知られていますが、子宮の中にも独自の細菌叢が存在することがわかっています。

健康な子宮内では、ラクトバチルス属(乳酸桿菌)が優勢で、全体の90%以上を占めるのが理想的とされています。ラクトバチルスは乳酸を産生して子宮内を弱酸性に保ち、病原菌の増殖を抑える役割を担っています。

フローラのバランスが崩れると

ラクトバチルスの割合が低下し、他の細菌が増えた状態になると、子宮内の環境が着床に適さなくなる可能性があります。2016年に発表されたMoreno氏らの研究では、子宮内フローラでラクトバチルスが90%以上を占める群は、それ以下の群に比べて着床率・妊娠継続率・出生率が有意に高かったと報告されています。

ただし、この研究は比較的小規模であり、今後さらなるエビデンスの蓄積が期待される分野でもあります。現時点で確実に言えるのは、子宮内の細菌環境が着床に影響を与える可能性があるということです。

子宮内フローラの構成比を示した図。ラクトバチルス優位(90%以上)の状態と、バランスが崩れた状態を比較

EMMA検査の内容

EMMA検査では、子宮内膜から採取した検体に含まれる細菌のDNAを網羅的に解析し、どの細菌がどれくらいの割合で存在するかを調べます。

検査でわかること

  • ラクトバチルス属の割合(90%以上かどうか)
  • その他の細菌の種類と割合
  • 子宮内フローラが「正常」「異常」「中間」のどの状態か

検査の流れ

  • 検体採取:子宮内膜の組織を細いカテーテルで少量吸引する(数分で終了。痛みには個人差がある)
  • 解析:採取した検体をIgenomix社のラボに送付し、NGSで分析
  • 結果:約2〜3週間で結果が届く。担当医から説明を受ける

検査の結果、ラクトバチルスの割合が低い場合は、乳酸菌製剤(ラクトフェリンやプロバイオティクス)の服用や、抗生剤による治療が提案されることがあります。

glossary-emma-alice 図解

ALICE検査の内容

ALICE検査は、慢性子宮内膜炎(CE:Chronic Endometritis)の原因となる病原菌を特定するための検査です。

慢性子宮内膜炎とは

子宮内膜に慢性的な炎症が続いている状態です。自覚症状がほとんどないことが多く、一般的な婦人科検診では見つかりにくいのが特徴です。着床不全や反復流産の原因の一つとして、近年研究が進んでいます。

検査で検出される主な原因菌

  • エンテロコッカス属(Enterococcus)
  • 連鎖球菌属(Streptococcus)
  • マイコプラズマ属・ウレアプラズマ属
  • その他のグラム陰性桿菌など

EMMA検査との違い

  • EMMA:フローラ全体のバランスを広く見る
  • ALICE:慢性子宮内膜炎の原因菌にフォーカスして検出する

多くのクリニックでは、EMMAとALICEをセットで実施します。同じ検体から両方の解析ができるため、追加の検体採取は不要です。

ラクトバチルス優位の重要性

子宮内フローラにおいてラクトバチルスが優位であることは、着床環境を整えるうえで重要なポイントと考えられています。

ラクトバチルスが果たす役割

  • 乳酸の産生:子宮内を弱酸性に保ち、病原菌の繁殖を抑制する
  • バイオフィルムの形成:子宮内膜の表面を保護し、外来菌の定着を防ぐ
  • 免疫環境の調整:過剰な炎症反応を抑え、胚の着床を受け入れやすい免疫状態をつくる

こうした働きにより、ラクトバチルスが豊富な子宮内環境は、胚にとって「居心地のよい場所」になると考えられています。

検査結果の活かし方

EMMA・ALICE検査の結果は、具体的な治療方針につなげられるのが大きな利点です。

EMMA検査で異常が見つかった場合

  • ラクトバチルス製剤の服用:プロバイオティクス(乳酸菌サプリ)を一定期間服用し、フローラの改善を図る
  • 再検査:治療後に再度検査を行い、フローラが改善したことを確認してから移植に進むケースが多い

ALICE検査で原因菌が検出された場合

  • 抗生剤治療:検出された菌に有効な抗生剤を14日間程度服用する。菌の種類によって使用する抗生剤は異なる
  • 治療後の確認:抗生剤治療後、必要に応じて再検査または子宮鏡検査で炎症の改善を確認する

費用について

EMMA・ALICE検査は保険適用外の自費検査です。費用はクリニックによって異なりますが、セットで6〜8万円程度が目安です。先進医療として実施している施設もあるため、通院先に確認してみてください。

検査を受けるタイミング

一般的に、以下のような場合に検査を検討することが多いです。

  • 良好胚を2回以上移植しても着床しない(反復着床不全)
  • 流産を繰り返している(反復流産・不育症)
  • 慢性子宮内膜炎の既往がある

検査を受けるかどうか迷っている場合は、担当医に「自分のケースでは検査の意義があるか」を率直に聞いてみるのがおすすめです。状況に応じた判断を一緒に考えてもらえます。

まとめ

EMMA・ALICE検査は、子宮内の細菌環境を可視化し、着床に適した状態かどうかを客観的に評価できる検査です。

  • EMMA検査は子宮内フローラ全体のバランスを調べ、ラクトバチルスの割合を確認する
  • ALICE検査は慢性子宮内膜炎の原因菌を特定する
  • 検査結果に基づいて、乳酸菌製剤や抗生剤による具体的な治療が可能
  • 良好胚を移植しても結果が出ないときに、原因を探る選択肢の一つになる

「できることはすべて試したい」と感じている方にとって、子宮内の環境を整えることは、次の移植に向けた前向きな一歩です。検査の必要性や時期については、担当医と相談しながら決めていきましょう。